研究概要 |
本研究では,人間と自動化システムとの相互作用を分析し,訓練された者でも自動化を過信しうることを確認した(Itoh, Inagaki, 2004).職業人の場合,相互チェックにより過信の顕在化を防いでいる(伊藤,田中,荻野,石橋,2002)が,自動車など利用者の多様性が著しい場合には工学的な過信防止策が必要となる. 「過信」の概念は,従来より多様な意味合いで用いられているため,本研究では,過信が一つの原因となっている航空事故や災害事例を分析し(たとえば,田中,伊藤,2003,など),概念の整理および理論的精緻化を行った(伊藤,2003).これにより,過信概念の全体を俯瞰でき,今後個々の研究においていずれの側面に注目しているかがわかりやすくなるため研究の見通しがよくなったといえる. 本研究では,上で整理したものの中でも,とくに自動化システムのメンタルモデルに誤りのあるタイプの過信に注目した.なかでも,自動化システムの能力の範囲に関する過信について,自動化システムの能力の限界とその理由についての情報が与えられないと過信に至りやすくなることを,認知工学的実験により明らかにした(伊藤,稲橋,田中,2003,など).また,自動化システムの設計者の想定と使用者の想定との差異により,実行内容の範囲に関する過信が使用経験を通じて,とくに,意図しない使い方をした結果として起りえることを示唆する結果を得ている(Itoh, Inahashi, Tanaka, 2004). 以上の研究成果は,平成14,15年度を通じて,査読つき学術雑誌論文3件,査読つき国際会議論文4件,解説記事1件としてすでに公表されている.また,投稿中論文2件,投稿準備中論文1件がある.
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