研究概要 |
平成15年度は,以下の2種のテーマについて研究を執行した。 1.視覚障害者のコンピュータ利用における音声設定の実地調査 スクリーンリーダを利用している視覚障害者の合成音声の設定状況を調べた。さらに,高い頻度で利用されている音声設定の速度とピッチを実測したところ,以下のような結果が認められた。 (1)音声の速さを最高速度に設定している回答者が最も多く,その速度は一般的な朗読音声の2倍であった。 (2)音声のピッチは,初期値のまま変更していない回答者が最も多かった。その周波数は,晴眼者を対象に調べた聴取に適したピッチと近い値であった。 (3)声質の性別は,8割以上の回答者が男声に設定していた。 2.視覚障害者用スクリーンリーダの詳細読みに関する検討 -漢字書き取り調査- 現在使われているスクリーンリーダの詳細読みを聞いて,児童がどの程度漢字を想起できるかを調べるため,小学5年に配当されている教育漢字の詳細読みを小学6年の児童に聞かせ,その詳細読みが説明していると思われる漢字1字を書かせる実験を行った。その結果,全刺激400個の平均正答率は67.1%であった。正答率が低かった漢字54漢字の詳細読みのわかりにくさの要因を整理したところ,以下の4つの要因が大きかった。 (1)説明語が語彙範疇にない,または親密度が低い(35字) (2)当該学年では読みを未習(18字) (3)音読みが単独で現れるとわかりにくい(8字) (4)同音異義語を区別可能だが,親密度が高い語を想起(8字) これより,6年生児童における詳細読みのわかりにくさの最も大きな要因は,語彙範疇外(読みの未習を含む)あるいは親密度の低い説明語を使うことにあると言える。 以上の成果を研究成果報告書としてまとめ,盲学校,視覚障害リハビリテーション施設,関連分野研究者らに配布した。
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