信頼性分析の一手法の構築とその応用を目指す目的で、初年度として下記の2点について理論的考察と実験的調査を行った。 (1)行動の信頼性モデルの構築:人間行動の信頼性に関わる要因と要因間の関係を認知科学的側面から再検討し、これら要因間の関係を表すモデルを構築、またこの実験的検証。 (2)閾値の設定とシミュレーションによる検証:選択対象となるオブジェクトサイズとその作業効率、特に選択ミスという観点からの考察、及びその作業効率の推定モデル化。 結果として、まずBaileyやFittsらの研究より、作業の遂行速度及び正確さ、及びこれらに係わる要因として、作業遂行の困難さ、作業者の適応性・習熟性、並びに心理的・生理的要因の3つに分類した。また、これらの均衡関係をPewの提案しているSATO(Speed Accuracy Trade-Off)等を参考に、同一空間上に表現することを試みた。この関係を利用することにより、ある一定の制約条件下では事前にその作業の効率を見積もることが可能であることを、アイコン選択作業により実験的に検証した。 次に、上記アイコン選択作業の実験結果を下に、(2)に対する実験的考察を行った。 ある特定条件下における作業の遂行速度及び正確さの関係には、明らかなTrade-offの関係を捉えることができ、これに対し当てはめた推定式により、非常に高い精度で2つの関係を推定できることを確認した。 また、ターゲットとなるアイコン等の大きさは、散らばっているポインティング地点をできるだけ多く包含することが望ましいと考え、ガンマ関数を用いポインティング精度を確率的に算出するモデルを提案し、数値シミュレーションにより検証した。これにより、ある一定の作業条件下において、ターゲットとなるオブジェクトの大きさを変化させることで、どの程度の精度が見込めるかが判定できることとなった。
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