研究概要 |
内陸活断層を震源断層とする直下型地震の危険度評価は,「強震動予測のレシピ」に代表される大地震の強震動波形の事前予測を目的とする高度な議論が展開されている.この計算過程の中では,震源のモデル化,地震波伝播や地盤増幅効果を含んだ地下構造などさまざまなパラメータが必要となる.この中で,変動地形学や古地震学を基にした活断層研究の成果は,活断層の認定に基づく将来の大地震の発生場所を特定することにとどまらず,地震の規模や,詳細な波形予測に大きな影響をもつ破壊開始地点・破壊伝播方向およびアスペリティの位置の推定に有効な情報を与えると考える. そこで,まず,「活断層データベースと地震の規模の推定」について,断層面積ではなく活断層長と変位量あるいは平均変位速度の2変数を用いた経験式の作成を行い,さらに従来の回帰式との優位性の差をAIC(赤池情報量基準)を用いて議論した. 次に,「破壊開始地点・破壊伝播方向の推定」について,活断層分岐モデルを基にしたGIS(地理情報)データベースを作成して,1999年にカリフォルニアで発生したヘクターマイン地震やトルコのイズミット地震でもモデルが成り立つことを示した.これに加えて,横ずれ断層末端の地形の隆起・沈降の変位パターンが歴史地震で観測された変位や変動地形と良く調和するという事実をモデルとあわせて「活断層詳細デジタルマップ」を基図とした破壊開始地点データベースの作成を行った. これらの結果を踏まえて,「強震動予測レシピ」の中での活断層のモデル化について,特に,強震動予測レシピをセグメント化が可能な長大な起震断層帯に適用するときには,確率論的地震危険度マップとの整合性も考えて「活断層の地震発生モデル」の風味を一貫させるべきであり,その根拠とするための活断層データの蓄積と検討が必要であることを議論した.
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