研究概要 |
本研究では,玄海灘からの海風進入に伴って気温,水蒸気,風向風速の変化と局地雷雲発生との関係を明らかにすることを目的に3年間観測を行ってきた.即ち,水蒸気の観測網を充実させることで,局地雷雲の発生を捉えようという試みを行ってきた.しかし,水蒸気量の変化と雷雲の発生を関連づけることが一部可能であったが,多くが不明瞭であった.このことは,観測期間中に,夏型の典型的な雷雲発生が不活性な気象状態が多かったことにも起因する.よって,統計的に明瞭な結果を導くために,科研研究期間終了後も観測は継続する予定である.今後は,水蒸気観測ネットワークとその他の気象情報を組み合わせた情報に基づいて,雷雲発生との関連性を抽出する. 以上不明瞭な観測結果であったが,次に述べる数値実験及び解析を通じて,この研究における課題を認識することができた.最初に,局地気象モデルを用いて地表面状態の違いを考慮した鉛直安定度の時空間推移を計算した.その結果,海風の鉛直循環が水蒸気と熱を再配分し,鉛直安定度に強く影響していた.また,夏季の気象場をパターン認識アルゴリズムを利用して分類した結果,夏季の雷雲発生パターンと関連性する気象場が大まかに認識できた.以上から,大規模な気象場から得られる特徴,局地循環の特徴,地形の影響,時々刻々変化する日射と斜面との関連性をパターン化して,水蒸気ネットワークから得られる情報(気温と水蒸気量によって推定される鉛直安定度の推移)を組み合わせることによって,局地雷雲の発生と捉えることが有効であると考えられる.
|