研究概要 |
2003年5月に発生したアルジェリア地震において,都市域を観測した偏波方向の異なる2つの人工衛星SARデータが取得できたので,本年度は高分解能を有する衛星画像の解析に重点を置いた。航空機SARデータと比較すると解像度がやや低いものの,地震前後を観測した貴重なデータセットであるため,画像内の建物群の特徴把握や被害地域の抽出を検討することで,脆弱性の評価を行った。アルジェリア地震ではVV偏波を持つERS衛星(分解能30m)とHH偏波を持つRADARSAT衛星(分解能8m)が地震前後にブメルデス市を観測している。分解能の違いが衛星画像に与える影響は明らかで,8m分解能のRADARSAT画像からは建物の配置や大きさがおおよそ判読できるものの,30m分解能の画像からは大きな建物以外は判読困難であった。やや中層建物がほとんどを占めるブメルデス市では強度情報から判断した偏波の違いによる影響は大きくはないことがわかった。さらに,地震前後の画像から建物の被害判読の可能性を検討し,兵庫県南部地震でのデータセットに基づき構築した被害抽出手法を適用したところ,1999年トルコ地震や2001年インド地震などの他の被害地震での結果と同様に,街区レベルでの被害抽出は可能であった。以上の検討から,個々の建物における後方散乱特性は,レーダ照射方向に対する建物の配置などの条件に依存し,極めて複雑であることがわかった。従って,建物属性や被害などの情報を抽出する汎用的な方法を構築することは容易ではないことが確認できた。しかし,ある程度の広がりをもった地域(街区など)について平均的な特徴を見いだすことは可能であった。
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