研究概要 |
近年,核融合実験装置内で発見されているカーボンダストは,トリチウムを吸蔵し装置内に残留するため問題視されているものの,その発生起源は不明である.本研究は,水素プラズマ・壁相互作用によるカーボンダスト発生のモデル実験を行い,この発生起源を検討することを目的としたもので,以下の成果を得た. 1.水素プラズマ・壁相互作用により,サイズ10nm程度と,300nm程度以上の2種類のダストが発生する.前者はほぼ球形で,気相で発生・成長したと考えられる.後者は不規則形状で,壁面堆積物の剥離に起因していると考えられる.また,10nm程度のダストの密度は,300nm程度以上のダストより3桁以上高く,トリチウム吸蔵の問題に関してより重要であると予想される. 2.カーボン壁への入射イオンエネルギーが15eVから200eVへ増加するにつれて,カーボン壁への水素吸蔵量が増加すること,カーボン壁からのカーボン系原子・分子の放出量が減少すること,10nm程度のダストの平均サイズと総体積がカーボンファイバコンポジットでは1/2,3/5,グラファイトでは1/3,1/5に減少することが分かった. 3.カーボンファイバコンポジットに比べてグラファイトでは,ダストの平均サイズと総体積がそれぞれ1/2,1/3になることが分かった. 本研究で用いた水素プラズマは,電子温度5eV,イオン密度10^<17>m^<-3>,水素原子密度は10^<18>m^<-3>程度である.今後,10^<19>m^<-3>以上のイオン密度を実現し核融合実験装置のダイバータ近傍に近い条件で,カーボンダスト発生起源を解明する必要がある.
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