研究概要 |
申請書「研究計画・方法」に記述に従い本年度はNBA付加体のTLSにかかわるDNA polymeraseを分子遺伝学的方法を用いて解析した。ただ大腸菌JM103(uvrA,mutS)におけるDNA polymerase Pol II,Pol IV,Pol V欠損株が得られなかったため、JM103にかえてMGZ(uvrA)を用いてファージ(P1)トランスダクション法によりPol II,Pol IV,Pol V遺伝子欠損株を作成した。 作成した各種polymerase欠損大腸菌MGZ株に、NBA付加体を部位特異的に1箇所だけ持つプラスミドを導入、複製させた。複製したプラスミドは、付加体箇所でTLSがおこるとLacZ遺伝子の読み枠が正しく青、付加体の反対側のDNA鎖が複製されると読み枠がずれて白いコロニーを生ずるよう設計されている。この表現形の違いを利用して複製プラスミドを解析した結果、pol V欠損株においてのみTLS頻度の上昇が認められなかった。またpol Vを過剰発現するプラスミドを導入したMGZ株でプラスミドを複製させるとT LS率が大幅に上昇した。これらのことからNBA付加体はpol V(umuD'_2C)によって損傷乗越え複製されることが分かった。更にこの複製プラスミドを抽出しその塩基配列を決定したところ、付加体箇所での突然変異率が4%以下と低く、複製が正確に行われ誤った塩基の取り込みはほとんどないことも判明した。
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