研究概要 |
雑草性を有する野生植物を用いた環境修復技術の実用化に向けた基礎研究として,以下の項目を実施した。 1)ミクリ属植物は,水辺の植物群落の復元などにおいて自然修復措置の素材として注目されている水生雑草であるが,自生状態での形態的特徴からの種の識別が困難であるため,環境修復の現場では複数の種からなる集団を単一種とするなどの混乱がみられる。そこで,形態的特徴に頼らない種の識別法を確立する目的で,葉緑体DNAの塩基配列の変異を調査した。葉緑体DNAのtrnLイントロンおよびtrnL-F遺伝子間領域の塩基配列からは種に固有の変異が検出され,ミクリ属の6種を識別できた。この方法は,少量の葉片でも分析できるので,同定の困難な希少種において効果的であると考えられた。 2)昨年度からの継続として,ミクリ属植物の実際の保全方法を策定する上で必要となる遺伝的多様性,特に小集団内の遺伝的な構造を,AFLP分析により明らかにした。ミクリ,オオミクリおよびヒメミクリにおいて,それぞれの分類群で特徴的な変異の存在様式が認められ,その変異は繁殖様式や分布の現状と拡散過程を反映していると考えられた。これらの情報をもとに,遺伝的多様性の保全と修復法について検討した。
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