研究概要 |
【研究目的】環境中に排出される各種水資源中に含まれている未利用フッ素を回収,資源化することを最終目的とし,(1)歯にフッ素が固定されるプロセスからヒントを得た生体模倣法を組み合わせたフッ素回収・資源化技術の構築および(2)水産業廃棄物などの未利用カルシウム資源を用いた水処理に用いる機能性材料の開発を行う。 【研究成果】(1)生体模倣法による環境中フッ素化合物回収:歯にフッ素が固定されるプロセスであるリン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)と水溶液低濃度フッ素化合物との反応機構を調べた結果,DCPDは水溶液中でその表面にナノスケールの微小結晶を析出させた「ナノ表面構造」を誘起した後,フッ化物イオンと速やかに反応し,難溶性のフッ素アパタイト(FAp)を生成することを示した。またこの種のナノ表面構造を誘起させたDCPDを用いて,地下水中や大気中の微量フッ素化合物を定量的に固定することができることを示した。また,DCPDとフッ化物イオンとの反応により生成したFAp中に含まれるフッ化物イオン量を定量する新しい手法を開発した。(2)フッ素を資源化できる機能性材料開発:民間企業との共同研究により,軽質炭酸カルシウム材料の生産プロセスにヒントを得て,石灰石とリン酸水溶液から,炭酸カルシウムとリン酸カルシウムのハイブリッド材料の合成に成功した。 【今後の展望】本研究で得られた成果を発展させた内容で,現在NEDO技術開発機構産業技術研究助成の補助により環境中の微量フッ素化合物を固定・回収できる機能性材料開発およびその応用に関する研究を,環境省廃棄物処理等科学研究費補助金の補助により建設廃棄物中フッ素化合物の分析,除去に関する研究をスタートさせている。また,複数の企業との共同研究も実施しており,本研究の成果をさらに発展させることができると考えている。
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