研究概要 |
本研究では、環境低負荷型ゴム処理システムの構築を目的として、「酵素・メディエーターシステム」によるゴムの分解にとりくんだ。前年度はゴムの分解に対して有効な二つの酵素・メディエーターシステム、西洋わさびペルオキシダーゼ・1-hydroxybenzotriazole(HRP/1-HBT)とリポキシゲナーゼ・リノール酸(LPO/LH)の反応系を確立し、これらの反応系が天然ゴム製品、およびシス型とトランス型の1,4-ポリイソプレンの分解に有効であることを見出した。また、HRP/1-HBTのみがシス-1,4-ポリブタジエンを低分子量化した。 本年度はこの結果を受けて、1、酵素・メディエーターシステムによる1,4-ポリイソプレンとシス-1,4-ポリブタジエンの処理後の官能基分析、2、HRP/1-HBTによるトランス-1,4-ポリブタジエンの分解、および3.低分子モデル化合物を用いた分解生成物の分析を行った。まず1、の結果、各ポリマー中に水酸基とカルボニル基が生じていた。しかし、1,4-ポリブタジエンの酵素・メディエーターによる低分子量化は1,4-ポリイソプレンに比べるとかなり遅く、酸化の進行は必ずしも主鎖の酸化的開裂を導かないことがわかった。次に2、の実験では、HRP/1-HBT処理によって、懸濁状態のトランス型はシス型と同様に低分子量化したが、フィルム状のトランス型はほとんど分解しなかった。この結果から、HRP/1-HBT系はシス型とトランス型の両方を分解するが、結晶領域の分解は遅いといえる。3、の研究では、低分子モデル化合物中のポリブタジエン構造の酸化が、ポリイソプレン型構造に比べて著しく遅いことが示され、1,4-ポリイソプレンと1,4-ポリブタジエンにみられた分解速度の違いは、モノマーユニットの化学構造に由来していることが示唆された。
|