研究概要 |
膜型酵素バイオリアクターを用いた連続的配糖化による光学活性医薬品生産法を確立するため,テルペンおよびフラボノイドを基質として糖加水分解阻害による生産性向上の検討を実施した。 1.各種のテルペン(ステロイド)化合物やフラボノイド類の酵素的グルコシル化 前年度開発した膜型固定化酵素バイオリアクターを利用して,ニチニチソウ培養細胞由来のUDP-glucosyltransferase活性画分,可溶性画分,膜画分,膜結合型酵素画分,および,顆粒型酵素画分を固定化した後,それぞれの基質特異性を検討した結果,多種類にわたる芳香族化合物やフェノール性物質のグルコシル化を触媒することが確認された。 さらに,ステロイドホルモンの一種であるテストステロン還元体の他に,標準反応条件下において,UDP-glucoseを糖供与体として,アンドロステノン還元体の効率的なグルコシル化も触媒し,対応するモノグルコシドを平均変換率40%以上で生成した。 また,標準反応条件下において膜画分のUDP-glucosyltransferaseを用いた,植物色素である各種のフラボノイド類への位置選択的なグルコシル化も可能であった。しかし,カテキン,ペラゴニジン,コウジ酸,および,ポリフェノール等については,今回,設定した酵素反応条件下においては優位にグルコシル化されなかった。 2.グルコシダーゼ活性の制御による生産性の向上 膜型固定化酵素バイオリアクターによって生産されたモノグルコシドが,ニチニチソウ培養細胞由来の膜画分や可溶性画分に共存するbeta-グルコシダーゼにより加水分解されることが確認されたことから,モノグルコシドの反応混合液中での分解を防止することを目的として,beta-グルコシダーゼの基質であるイノシトールを添加して反応させることにより,添加しない場合に比べて約1.5倍増加させることが可能であった。
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