研究概要 |
(1)特徴的な5員環の炭素環構造をもつカルジトールの生合成の解明に関し、炭素環を作る過程の反応機構の追跡に関し、部位特異的に標識したグルコースを用いて、生成物の追跡を行った。本化合物の取込み率はきわめて高く1H NMRで,定量的な取込み率の観測が可能であった。結果グルコース6位,1位,4位水素がそれぞれカルジトール6位ヒドロキシメチレン,1位,4位水素に取り込まれることが明らかとなった。本結果はカルジトールがグルコースの1位と5位で環化して生成することを示し,その際にミオイノシトールに類似するような生成機構で生成することを強く示唆するものである。 (2)古細菌脂質の最も単純なモデルである直鎖イソプレノイドリン酸構造体の飽和度の異なる3種として,完全飽和体,フィトール類似の一つの二重結合をもったタイプ,ゲラニルゲラニオールから合成される4つの二重結合をもったタイプを合成し,この脂質からリポソームを形成させ,本リポソームの安定性を,蛍光物質カルセインのリポソームからの漏出を安定度の指標として用い検討した。本脂質はホスファチジルコリンからなる通常生物の脂質より再構成した膜脂質の30%程度という若干弱いものの同等な安定度を示し,またフィトールの疎水基部分に相当する一つの二重結合をもった脂質から調製したリポソームが最も安定であるという結果を得た。本結果は古細菌脂質やクロロフィルの分子進化に対し間題提起となると思われる。
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