研究概要 |
昨年度の研究の内容に基づき本年度はΔN52-CRT及びΔN52ΔC55-CRTの発現,精製,及び結晶化を行った。それぞれについて大腸菌を用いGST融合蛋白質としての発現、アフィニティー、イオン交換、ゲル濾過クロマトグラフィーによる精製を行いILあたり10mg程度の蛋白質を得ることに成功した。これらの試料について、主にハンプトンリサーチ社のCrystal Screenを用い200以上の結晶化条件について結晶化スクリーニングを行った。幾つか微小な結晶を得ることに成功した。今後幾つかのものについて回折像の取得を試みる。 一方、染色体の主要成分であるクロマチンの再構築のためヒストンの大量発現、精製系の構築を行った。これまでの多くの研究から、生体試料より調製したヒストンは複雑な修飾を受けていることが知られているが、組み換えヒトヒストンを用いることで、より単純に結果の解釈が容易な実験が可能となる。4種類のコアヒストンそれぞれについてcDNAを組み込んだpETベクターを用いて大腸菌での発現を行った。封入体として得られた4種類のヒストン(H2A,H2B,H3,H4)を尿素による可溶化、HPLCによる精製を行ない凍結乾燥後最終的に粉末状の蛋白質をそれぞれ10mg得た。これまでヒトヒストンの大量発現系に関する報告はされておらずこの研究が最初の報告となる。これらを尿素存在下で混合し段階的に尿素を除去した後、ゲル濾過クロマトグラフィーにて精製し、ヒストン8量体を得た。 更にこれまでに報告がないリンカーヒストン(ヒトヒストンH1)の発現系の構築も試みた。ヒトcDNAライブラリーからH1特異的プライマーを用いてcDNAを増幅し、その後pETベクターに組み込んでの発現を試みた。大量発現が見られ、今後のリンカーヒストンを含んだクロマチン再構築が可能となった。
|