研究課題
若手研究(B)
血管新生過程は様々な蛋白質因子および遺伝子による複雑な情報伝達系によって制御されている。これらのコンポーネントがどのようにかかわり合って血管構造が構築され、どのような機構によって維持されているのかを理解するためには、遺伝子レベルの解析に加えて、分子と分子の接触によってもたらされる情報伝達機構を詳細に(原子および電子の移動のレベルで)解析しなければならない。本研究は血管新生メカニズムにおける成長因子angiopoietinおよびその受容体Tie2の役割を構造学的な見地から明らかにすることを目的として実験を進めてきた。成長因子angiopoietinは様々な状態の多量体構造を形成し容易に不活性するため、受容体Tie2の立体構造解析を中心に実験を進めた。大腸菌および酵母を利用した大量発現系ではTie2細胞外ドメインは可溶化分画として回収できなかったが、ドメインごとに短く切ることで調製が可能となった。これまでに立体構造解析をおこなったligandの選択性に関与すると考えられるドメイン5に加え,ligandとの結合に必須であるドメイン1の発現を行い、高純度まで精製することに成功した。ゲルろ過クロマトブラフィーの結果からはこのドメイン1は溶液中で2量体を形成している可能性が高い。これまでに結晶構造が明らかになっているいくつかの受容体Tyrキナーゼの複合体では成長因子との複合体形成時にのみ2量体を形成するのが一般的である。これらのことから、Tie2は既知のものとは異なる2量体形成およびそれと密接に関連する受容体の活性化機構が示唆される。
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Journal of Molecular Biology 339
ページ: 873-885