研究概要 |
バクテリア由来のPASドメイン含有タンパク質、BjFixL, AxPDEA1, EcDos, MtDosは、PASドメイン中にヘムを含んでいることから、ヘムがセンサーとして機能していると考えられている。そこでこれらのタンパク質のヘムドメインについてヘム配位構造を明らかにするとともに、酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)とヘムとの相互作用についても解明することを目的とした研究を行った。BjFixL以下のタンパク質のヘムドメインを大腸菌の大量発現系を利用して高純度に精製した。精製標品の電子吸収スペクトルおよび共鳴ラマンスペクトルを測定し、それぞれのヘムドメインの配位構造を解明した。その結果、EcDosは6配位低スピンであったが、他のものは5配位高スピンであった。これらのタンパク質ではヘム近傍のアミノ酸配列の相同性が高いにもかかわらず配位構造が異なっていることから、EcDosではヘムの生理的役割が他のものとは微妙に異なっていることが示唆された。次にEcDosの第6配位子を明らかにするために部位特異的変異導入法を用いた実験を行った。EcDosのメチオニン95はBjFixLではイソロイシンに相当するため、メチオニン95をイソロイシンに置換した変異体EcDosを調製し、分光測定を行った。その結果イソロイシン変異体ではヘムの配位構造は5配位高スピンであり、他のセンサーヘムタンパク質と同じであったので、このことから、EcDosの第6配位子はメチオニン95であることが示唆された。CO結合型およびNO結合型タンパク質の共鳴ラマンスペクトルからは、配位子とヘム近傍アミノ酸との相互作用を観測することができる。NO結合型EcDosの共鳴ラマンスペクトルからはNOが水素結合していることを示す情報が得られた。
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