研究概要 |
1、NotchシグナルはT細胞分化の初期ステップに必須である。しかし、胸腺上皮特異的に発現する転写因子Foxn1がNotchリガンドの発現に関与するかどうか、胸腺原基でNotchリガンドがどう分布するか不明である。そこで、in situ hybridizationにより正常マウスとヌードマウスの胸腺原基でのDll 1,Dll 4の発現を解析した。正常マウス胎生13日胸腺原基でDll 4は上皮領域全体に強く発現するが、Dll 1は上皮領域に散らばって発現していた。他方、ヌードマウス胸腺原基ではDll 1もDll 4も発現していなかった。以上より、胸腺原基で広く分布するDll 4がT前駆細胞分化に強く関わること、胸腺上皮におけるDll 1とDll 4の発現はFoxn1により調節されていることが示唆された。(投稿準備中) 2、胸腺原基環境のどこでどの分子がT細胞の増殖分化に関わるかは十分明らかでない。そこで、分化初期過程のT系細胞の増殖因子IL7とSCFの発現がFoxn1転写因子とどのように関わるかをヌードマウスの胸腺原基を用いてin situ hybridizationにより検討した。正常マウス胎生12、13日胸腺原基において、IL7,SCFは上皮領域全体に強く発現するが、ヌードマウス胸腺原基ではどちらも発現が認められなかった。以上より、IL7,SCFは胸腺原基環境を形成する胸腺上皮細胞に発現し、それらの発現はFoxn1により調節されていることが示唆された。(投稿準備中) 3、Foxn1が直接発現調節する遺伝子を同定するため、クロマチン免疫沈降法によりFoxn1標的ゲノムDNA配列を濃縮する条件検討を行っている。また、標的遺伝子の全長cDNAを単離するために新生仔マウス胸腺cDNAライブラリーを構築した。しかし、未だ標的ゲノムDNA配列を得られず、実験を継続中である。
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