研究概要 |
本研究はDNA複製開始に関わる新規タンパク質複合体GINSの細胞周期に置ける働きを明らかにすることを目的としている。 前年まではアフリカツメガエルタンパク質を用いて実験を進めていたが、培養細胞の扱いの容易さから、ヒトGINSタンパク質を用いて実験を進めるために、まずヒトGINSタンパク質を形成するHSld5,HPsf1,HPsf2,HPsf3の4種のタンパク質をクローニングした。クローニングされたタンパク質はいずれもアフリカツメガエルの相同タンパク質と90%以上という高い相同性を有していた。次にクローニングされたHSld5,HPsf2,HPsf3タンパク質をGFP融合タンパク質としてHeLa細胞内で発現させた。間期においては、HPsf2を除く2種類のタンパク質はいずれも主に核に局在していたが、HPsf2は、細胞によって主に核に存在しているものと細胞質にも局在が見られるものが観察された。また、分裂期において、HPsf2,HPsf3においては、紡錘体の極に分布が見られた。さらに3種類の蛋白ともに、分裂秋喜においてmid-bodyに濃縮されているのが観察された。分裂期に置けるこういった分布は、細胞質分裂に関与するパッセンジャープロテインと呼ばれる一連のタンパク質のものと類似しており、GINS複合体の構成タンパク質がDNA複製開始のみではなく、細胞質分裂にも何らかの関与をしていることを示唆している。一方で、抗体を用いたHPsf2の染色は、この蛋白質がS期に置いて量が増加し、一方でM期に置いては大きく減少することを示し、このタンパク質のヒト細胞においての主要な役割がDNA複製にあることを示唆している。
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