研究課題
若手研究(B)
発生過程においては、組織のもつ3次元的構造が形態形成に影響を与えると予想される。本申請では表皮や上皮の持つ構造が形態形成に与える効果を、数理モデルを用いて研究した。また遺伝子ネットワークモデルに基づき、細胞状態の多様性を数理的に研究した。これにより、形態形成を遺伝子レベルから理解するための基礎を確立した。魚類の表皮の縞模様について実際の魚の表皮構造に基づき、体表の前後と背腹で物質の拡散速度が異なるとした拡張チューリングモデルを考え解析した。これにより魚の表皮の縞模様が種によって決まった方向にそろう理由の説明に成功した。解析の結果、activatorとinhibitorの拡散異方性の差にのみに依存して縞の方向が決まるということがわかった。このことから、拡散に影響を与えうる異方性のある構造、例えば鱗の形態や透過性のわずかな違いが、劇的な縞の方向の違いを生んでいると考えられる。この成果に加えて葉脈形成について新しい有力なメカニズムを提唱した。実験的な知見によると、植物ホルモンの一つであるオーキシンの重要な働きが示唆されている。またオーキシン輸送蛋白質(PIN)はオーキシンのフラックスに反応して、その細胞膜上の局在を変化させると考えられている。このようにオーキシンとPINの局在はポジティブフィードバックを形成しており、その結果植物の極性やパターン形成に影響を与えていると考えられている。この仮説に基づき、オーキシンとPIN局在とのポジティブフィードバックによる葉脈パターン形成のモデルを考え、cell-baseシミュレーションによって解析を行った。計算機シミュレーションを行うと、伸長と分岐の繰り返しにより葉脈が作られる一方で、全体として等間隔のネットワークが形成された。
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