研究実績の概要 |
Prothymosin alpha (ProTa)のヘテロノックアウトマウスは不安惹起、学習障害ならびに神経新生の抑制といった表現型が観察された。また、神経新生に関連する歯状回をレーザーマイクロダイセクションしてマイクロアレイ解析を行ったとき、Neuropilin1, Rac GTPase-activating protein 1, Neurexin 3, Integrin beta 3, Discs, large homolog 4, DNA methyltransferase 1, Neurofibromatosis1等の有意な発現低下が観察された。Integrin beta 3 欠損マウスでは不安惹起が報告されていることと一致、Discs, large homolog 4, DNA methyltransferase 1, Neurofibromatosis1についても学習記憶との関連で報告されていることとも一致、さらにはNeuropilin1、Neurexin 3も神経新生との関連で報告されていることと一致したことから、行動表現型の殆どが歯状回の遺伝子発現変化と対応すると結論できた。この他、ProTaは虚血脳、網膜の保護作用を示すが、これまで報告してきたTLR4を介するpreconditioning効果とは異なる、虚血後に有効な新たな受容体応答を介することを示唆する結果を見出した。実際、その候補受容体に対する中和抗体の硝子体内注入によりProTa効果が遮断された。ProTaのミニマムペプチド配列P6のアミノ酸一残基変異P6Qにおいてもほぼ同様な受容体応答を介する治療効果を確認している。
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