研究課題
特別研究員奨励費
超伝導体の基本的性能は、臨界温度(Tc)、臨界磁場(Hc2)、臨界電流(Jc)の3つのパラメータで評価される。本研究で対象とする化学式Ba1-xKxFe2As2 (0<x<1)で表される物質群は2008年に発見された鉄系高温超伝導体の一種であり、約40Kに至るTcと100Tを超えるHc2を併せ持っていることから、強磁場発生用マグネット線材等の応用を想定した開発が進められている。本研究ではBa1-xKxFe2As2の純良単結晶対象として、その臨界電流JcのK濃度(x)依存性を明らかにし、Jcを決定づける磁束ピニング機構を解明するとともに、Jcの向上に向けた指針を確立することを目的として研究を行った。精密に組成制御された単結晶を用いて、幅広いドーピング領域、磁場、温度においてJcの振る舞いを精査した。単結晶試料は申請者の所属するグループで開発されたフラックス法を用いて育成し、EDXによる単結晶試料の化学組成の評価、SQUID磁束計を用いたTcの評価、磁場中電気抵抗測定によるHc2の評価を行った。Jc の評価はSQUID磁束計を用いた磁化曲線のBean模型解析を用いた。系統的な実験を行った結果、本物質群のJcのx依存性は、0.30付近で鋭い極大を示すことが明らかとなった。この関係は、Tcのx依存性が0.3 から 0.5 にかけて緩やかに変化しているのとは対照的であり、最高のJc出現が外因的な要因に依るものであること、また、最高のTcを出現させる組成が必ずしも応用にとっての最適組成とはなっていないことを示している。本物質の異常なJcの振る舞いは、特異な磁束ピニング機構に依存すると考えられる。その可能性として、構造相転移に起因する双晶境界、量子臨界点近傍における非自明な超伝導凝集密度の分布等の可能性を提唱した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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PHYSICAL REVIEW LETTERS
巻: 118 号: 13 ページ: 137001-137001
10.1103/physrevlett.118.137001
PHYSICAL REVIEW B
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10.1103/physrevb.95.014517
Scientific Reports
巻: 6 号: 1
10.1038/srep26671