研究課題
特別研究員奨励費
私の研究テーマは「慢性型ATLの急性転化に関わる病因遺伝子の探索と臨床応用への展開」である。慢性型と急性型ATLのゲノム異常についてaCGH法を用いて網羅的に解析した。両病型のゲノム異常様式を比較すると、慢性型と比べて急性型で頻度高く認められる部が4つ存在しており、同部が急性型病態にとって重要な異常と推測した。発現値解析、機能解析をさらに実施し、CDKN2A欠失がATLの病態にとって極めて重要な異常であることを見出した。CDKN2A欠失は細胞周期の脱制御をもたらすことが知られている。このことから、CDKN2A欠失以外の細胞周期の脱制御に関与するゲノム異常もATLの病態にとって重要ではないかと考え、それら頻度を病型毎に算出した。すると、これら異常は慢性型と比し、有意に急性型で多く認められた。このことから、細胞周期の脱制御が急性型病態にとって重要と考えた。また、CD58の異常に着目をした。というのも、CD58の欠失異常は、細胞周期関連遺伝子群の異常を有さない慢性型症例、急性型症例で認められる異常であり、かつ有意に急性型で頻度高くみられる異常であったからである。CD58の欠失異常は腫瘍の免疫逃避機構に関与していることが他の悪性リンパ腫病型で示されている。実際、CD58の欠失異常を有する細胞株では、表面抗原に発現しているCD58が低値となっていた。これらのことから、急性型ATLでは免疫逃避機構もその病態にとって重要な機構のひとつと考えられた。これらのことから急性型ATLの病態にとって、細胞周期の脱制御機構と免疫逃避機構が重要な役割を担うと考えた。実際、慢性型症例においてこれら異常を有している群は有意に急性転化をしていた。このことから、両機構が慢性型ATLの急性転化機構に関与していると考えた。これら異常は慢性型ATLにおける良い急性転化予測マーカーになると考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Cancer Research
巻: 74 号: 21 ページ: 6129-6138
10.1158/0008-5472.can-14-0643