研究課題
特別研究員奨励費
本年度は、多結晶純鉄上で進行する不均一腐食反応の解析を目的として、以下の二つのアプローチより素地鉄表面結晶方位が酸化物皮膜の形成に与える影響を検討した。1)多結晶鉄上に形成する熱酸化皮膜について、下地鉄の結晶面方位が熱酸化皮膜の電気的物性に与える影響を微小キャピラリ(MCC)法により精査した。前年度までに、二次元エリプソメトリーを用いて二層構造(内層Fe3O4/外層α-Fe2O3)をとる酸化物層の厚さと素地結晶方位の関係を明らかにし、酸化物層が不均一に溶解する過程をその場観察した。本年度は、MCC法を用いた電気化学インピーダンス測定により、皮膜のドナー密度NDが内層Fe3O4の厚さおよび下地鉄の表面エネルギーと同様な大小関係を示すことを明らかにした。これら皮膜の結晶面方位依存性について、熱酸化物の異方性成長が内層Fe3O4の成長速度および外層α-Fe2O3の欠陥構造に影響を与えたためと説明した。これら熱酸化皮膜に関する研究成果をまとめた論文をアメリカ電気化学会誌にて発表した。2)その場二次元エリプソメトリーを用いて中性ホウ酸緩衝溶液中、純鉄上に形成する不働態皮膜の形成挙動について検討した。24時間の定電位分極中、膜厚の増加に伴い試料のエリプソメトリー像は変化したが、結晶面方位依存性はほとんど見せなかった。この結果について、結晶粒ごとの膜厚の差異がエリプソメーターの検出限界を下回ったためと考えた。一方、MCC法を用いた電気化学測定により不働態皮膜の電荷移動抵抗とNDに結晶面方位依存性が見出されたが、これらの値は明確な相関関係を示さなかった。これら皮膜特性に相関関係が見られない原因について、下地鉄の表面エネルギーや酸化物の異方性成長など複数の因子が同時に不働態化挙動に影響を与えるためと考察した。これら不働態皮膜に関する研究成果をまとめた論文を国際学術誌に投稿した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件) 備考 (2件)
Journal of The Electrochemical Society
巻: 163 号: 14 ページ: C815-C822
10.1149/2.0211614jes
巻: 161 号: 14 ページ: C594-C600
10.1149/2.0901414jes
http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/amc/index.html