研究実績の概要 |
これまでの研究から、分岐鎖アミノ酸の一つであるロイシンが mTOR シグナル伝達経路を介して、骨格筋の筋線維型や代謝特性に関連する遺伝子発現(mRNA や microRNA)を制御する可能性を見出した。最終年度は、ロイシンと筋細胞の分化・肥大の関係を明らかにするため、その細胞内センサーであり、mTOR 経路の活性化に関与する Leucyl-tRNA synthetase (Lars) のノックダウン実験を行なった。 筋分化誘導時(低血清培地変更時)に、 siRNA トランスフェクションした結果、Lars-si は Ctrl-si に比べ、各種筋分化のマーカー発現や Fusion Index を有意に低下させた。また、Lars ノックダウンにより mTOR 経路のリン酸化レベルは低下していたことから、Lars の筋分化時における mTOR 経路の活性化への関与が示唆された。筋分化の主要な制御機構として、mTOR-Igf2 経路が知られている (Yoon, Mol. Biol. Cell, 2013)。Lars-siトランスフェクションは、速やかには Igf2 発現を低下させたことから、ロイシンは細胞内で Lars-mTOR-Igf2 の経路により筋分化を制御している可能性が示唆された。 次に、分化した筋管に対し、48時間の siRNAトランスフェクションにより、Lars ノックダウンが筋肥大に与える影響を調べた。筋管の Lars はノックダウンされたが、mTOR のリン酸化・筋管の直径・各種遺伝子発現には変化がみられなかった。このことから、分化した筋管の肥大については、 Lars 以外のシグナル分子により mTOR 経路が制御される可能性が考えられる。
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