研究課題
特別研究員奨励費
骨粗しょう症や関節リウマチといた骨疾患は、人々の暮らしの質を著しく低下させることから、疾患原因の解明や治療薬開発が進められている。その過程で、骨吸収細胞である破骨細胞の機能異常(過剰な骨吸収)が骨疾患を誘発することが解明された。しかしながら、生体内における破骨細胞機能については、未だに未解明な部分も多く存在する。そこで本研究では、破骨細胞の骨吸収活性を蛍光強度変化によって解析可能な蛍光プローブの開発に取り組んできた。開発したプローブは、破骨細胞により形成された酸性領域を捉えるpH感受性と骨組織選択的送達能を有し、生体への注射による投与が可能である。分子構造を量子化学計算により緻密に設計することで、生きたマウス体内の破骨細胞活性を検出可能なプローブの開発に成功した。従来の骨破壊モデルでは、不活性破骨細胞は運動性が高く、活性化破骨細胞は静的状態を保つと考えられていた。しかしながら、開発したプローブと二光子励起顕微鏡を用いて、活性化破骨細胞の酸性領域を連続的に観察すると、静的状態を保つ細胞に加えて、細胞形状と酸性領域の位置が大きく変化する動的な細胞が存在した。この結果から、活性化破骨細胞は動的な状態と静的な状態を行き来しながら骨破壊を行うと考えられ、動的な活性化破骨細胞が骨破壊メカニズムにおいて重要な役割を果たすと示唆される。また、ATPase阻害剤により活性化破骨細胞のプロトンポンプ機能を阻害した際の、細胞の運動性に対する影響を検討した。その結果、静的状態の活性化破骨細胞は、酸性領域が消失した後も動的状態に移行せず、静的状態を保つことが明らかとなった。これは、破骨細胞の動的または静的状態への移行を鍵として、酸性領域の形成、消失が制御されることを示唆している。このように、本研究で開発したプローブは、骨吸収メカニズムを解明する強力なツールとして、幅広く社会に貢献できると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Nature Chemical Biology
巻: --
Chemical Society Reviews
巻: - 号: 14 ページ: 4953-4972
10.1039/c5cs00030k