先端増強型ラマン散乱顕微分光法(TERS)を用いた偏光測定を実現した。これにより、従来の限界(~300nm)を大きく超えた10nmというナノメートルの空間分解能での偏光ラマン測定を達成し、分子配向を画像化できる新たな手法を確立できた。具体的な内容は以下の通りである。 - 近接場光の偏光の評価のためにデフォーカス法を応用した光学系を構築し、TERS用金属プローブ先端内に誘起される双極子の振動方向に依存した散乱光パターンを取得することに成功した。 - 取得した散乱光パターンから、近接場光の偏光状態を解析する手法を確立した。散乱光パターンから双極子の振動方向を決定するアルゴリズム、プログラムを完成させ、得られた双極子の振動方向から近接場光の偏光状態を決定できた。 - 偏光解析を行った金属プローブを使用して標準試料のTERSイメージングを行い、解析した近接場光の偏光成分が正しいことを確認した。カーボンナノチューブは強い偏光特性を持ち、かつ2次元イメージより分子配向の決定が容易であるため、これを標準試料として使用した。カーボンナノチューブの分子配向と解析した偏光状態から予測できるTERS像を実験により得られるTERS像と比較したところ、両者が一致することを確認した。 - プローブ先端に双極子を誘起する際に入射する偏光を調節することで、任意の方向に双極子の振動方向を操れることを見出した。
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