2000年代に相次いで発見されたスロー地震は、プレート沈み込み帯の巨大地震発生域近傍において半年から1年の間隔で周期的に発生するため、地震発生物理を理解するためにも早期の発生メカニズム解明が求められている。本研究では、西南日本やアメリカ北西部などの沈み込み帯におけるスロー地震の発生メカニズム解明を最終的な目標に掲げ、具体的には[1]広帯域波形解析によるスロー地震震源過程の解明、[2]スロー地震発生域の構造推定による発生要因の解明、[3]新たなスロー地震発生モデルの構築を目標として研究を行って来た。まず、アメリカ北西部Cascadia地方における2010年のスロー滑りイベントの震源過程ついて詳しく解析し、スロー滑りイベントの周期0.1-100秒における広帯域震源スペクトルの推定に初めて成功した。その結果、同じ継続時間および同じ規模の普通の地震に比べ、スロー地震は高周波成分が豊富であるという名称とは逆の性質が示された。さらに、約1ヶ月継続したスロー滑りイベントは1つの長いタイムスケールの滑りではなく、半日以下という短いタイムスケールの滑りに分割可能であることも示された。これらの結果は国際学会等で発表した。また、スロー地震発生域の構造推定を行うため、表面波解析による地震波速度異方性推定方法を確立し論文として発表した。本研究は3年計画であったが、研究実施者の特別研究員中途辞退のため1年で終了し、新たなスロー地震発生モデルの構築には至らなかった。しかし、本研究の成果は今後のモデル構築に活かされると考えられる。
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