研究課題
特別研究員奨励費
発生過程において、細胞がどのように振舞うか、という疑問は、発生学の大きな疑問のひとつである。一方、特に、多くの脊椎動物のように個体の発生時間が長く、細胞数が多い生物においては、その全体像を捕らえることは難しい。その問題を解決するため、脊索動物門尾索動物亜門に属するワカレオタマボヤ(Oikopleura dioica)を実験動物として用いた。ワカレオタマボヤは、速い発生スピードと少ない細胞数から、これまで知られる中でもっとも単純な脊索動物であるといわれる。この生物を使えば、未受精卵から成体までのすべての細胞の振る舞いを、脊索動物の系で観察できるのではないかと考え、特に、ダイナミックな形態形成の起こる孵化後の発生に着目して、細胞挙動の記載を行ってきた。ワカレオタマボヤの体幹部の表皮は、左右対称で個体差のない、複雑なパターンを持っていることが知られている。ハウスと呼ばれるえさをとるためのフィルターを分泌するためにこのパターンが必須であり、生存のためにもこのパターンは重要であると考えられる。このパターンは、孵化直後の幼生では特に観察されないが、孵化後5時間ほどの間に急激に出来上がる。その家庭で、ここの細胞がどのように振舞うか、ライブイメージングを用いて、分裂方向やそのタイミングの観察を行った。その結果、いくつかの領域において興味深い現象が見られた。たとえば、背側の正中線上には、1列のはっきりした細胞列が存在し、それが孵化直後から成体まで維持される。また、腹側の正中に向かって、小さい細胞を生み出し続ける(肝細胞様の分裂を行う)細胞が2つあることもわかった。さらに、可変色蛍光たんぱく質Kaedeを用い、2細胞期の片側をラベルする実験により、細胞の系譜解析を行ったところ、表皮細胞では、2細胞期の割球の子孫細胞の境界と、実際の体の左右境界は一致しないことが示された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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