研究課題
特別研究員奨励費
本研究ではプラナリアの再生時のプロポーション形成およびその形成に関わるキナーゼ遺伝子を扱っている。前年度には、このキナーゼ遺伝子の機能阻害個体において、ERKというプラナリアでは前方化に関わっているシグナルの活性が低下していることを示唆することができた。そこで本年度では、キナーゼ遺伝子の機能阻害個体において、プラナリアにおける後方化シグナルであるβ-cateninシグナル経路の下流で発現を示す遺伝子の発現を調べたところ、発現範囲が前方領域に拡大していることが分かり、キナーゼ遺伝子が後方のβ-cateninシグナルに対して抑制的に働いていることが示唆された。このことは、キナーゼ遺伝子が、一分子で前方化シグナルと後方化シグナルを制御して再生に影響を与える因子であることを示唆しており、シグナルと形態形成の新しい関係性を示す大変興味深い結果である。一般に、ERKはMEKという因子により活性化され、そのMEKはRafという因子によって活性化される。プラナリアの再生時にもこのシグナルカスケードが働いていることが予想されため、MEK、Raf両ホモログに関して探索および機能解析を行い、プラナリアの再生時にERKの上流で働きうるMEKおよびRafホモログを同定した。プロポーションに関わるキナーゼ遺伝子はRafと同じファミリーに属し、また哺乳類ではMEKを活性化することが報告されているため、キナーゼ遺伝子はRafと同様にMEKの活性化を介してERKを活性化していると予想される。しかし、Rafの機能阻害では、キナーゼ遺伝子の機能阻害と違って再生時における器官再生そのものが起こらなくなる。そのため、キナーゼ遺伝子はRafとは異なる様式でERKを活性化しており、この活性様式の差異およびキナーゼ遺伝子の後方化シグナルへの影響が器官の再生位置(プロポーション)に重要な役割を果たしていることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Dev Growth Differ.
巻: 58(3) 号: 3 ページ: 260-9
10.1111/dgd.12270