研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き、保型形式とL関数の特殊値の研究、特にテータ対応・宮脇リフト・メタプレクティック群の生成的表現の研究を行った。 本年度は、実ユニタリー群に関するテータリフトの非消滅性を中心に研究した。テータリフトとは、ユニタリー群 U(p,q) の既約表現から、別のユニタリー群 U(r,s) の表現を作る方法である。テータリフトは零表現かもしれない。テータリフトが零にならないかどうかという問題をテータリフトの非消滅性という。昨年度には非アルキメデス的な場合のテータリフトを扱ったが、この時に用いた Gan-Gross-Prasad 予想が実ユニタリー群に対しても適用できることが明らかになり、テータリフトの非消滅性を判定する計算可能なアルゴリズムを与えた。これは十数年ほど停滞していた実テータリフトの非消滅性の問題に関する著しい進展であると言える。また、昨年度の研究と合わせて、局所テータリフトの非消滅性の問題が完全に解決されたことになる。 また、ユニタリー群における宮脇リフトの構成にも取り組んだ。この研究は埼玉大学の小嶋久祉氏との共同研究である。宮脇リフトとは、京都大学の池田氏が2006年にシンプレクティック群に対して構成した新しいタイプの関数のリフトである。本研究では、それのユニタリー群におけるアナロジーを構成し、その関数が恒等的に零でない場合に、それの標準 L-関数がどのように振る舞うかを計算した。 最後に、メタプレクティック群における Gross-Prasad と Rallis の予想についても取り組んだ。これは、生成的表現の分類に関する予想である。生成的表現は表現論・整数論の両分野で重要な役割を果たす。これを、局所 Langlands 対応を通して、随伴 L-関数と標準 L-関数との商の解析的性質により分類した。
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