研究実績の概要 |
A-to-I RNA編集は、RNA配列の網羅的解析により編集部位が同定されるようになった。しかしながら、責任酵素であるADARsが、それぞれの生体内の編集部位をどのように認識し、区別しているのか未解明である。これは、ADAR1とADAR2はそれぞれ特定の配列に対する嗜好性があるものの、ある程度補完しあえる複雑性にも起因する。また、生化学的解析では編集活性を示さないADAR3については、生体内でのターゲット部位を含め、その存在意義は全く不明である。そこで本研究では、各ADARに結合するRNAと結合部位を1塩基レベルで同定し、ADARの基質認識機構の解明と、特にADAR3の生理的役割を明らかにすることを目的として、研究を開始した。まず、ADAR1,2,3 各酵素を安定的に発現する細胞株を作成した。これらに対してPAR-CLIP法を実施し、結合RNAを同定することに成功した。その後、これらの基質にRNA編集が生じていることを、確認した。また、ADAR1,2をノックダウンした細胞を用いてRNA-seqによる網羅的な編集部位の探索、編集効率の比較を行った。その結果、ADAR3は編集活性を持たず、更にADAR1,2の活性にも影響しないことが示唆された。以上のように計画通り研究が進展しており、現在ADAR3が不活性である理由を更に解析中である。
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