研究課題
特別研究員奨励費
今年度は先行研究で得たデバイス作製手法や知見を生かし、化合物半導体ナノワイヤを用いた多接合型太陽電池構造案のミドルセルの1つに相当するInGaAs(約1.1eV)ナノワイヤアレイ太陽電池の作製を行った。しかしながら、直列抵抗が4.72Ω/cm2と大きく、表面電極として用いた透明導電膜とナノワイヤ間の接触抵抗を下げる必要があった。そこで、本研究ではn型ドーパントとしてTESnを用いたコンタクト層の導入を提案した。これは高濃度ドーパントとして使用できることに加え、Snを含有する透明導電膜ITOとの接触性の良さも期待できるためである。しかしながら従来の結晶成長時のドーピング手法に従ってTESnを導入すると、ナノワイヤ形状に強く影響を与え、横方向成長を促進する結果となった。軸方向にpn接合を形成するために、パルスドーピング手法を用いて実効的なTESn分圧を細かく制御することで、縦方向にSnドープしたコンタクト層を得ることに成功した。コンタクト層の導入によりデバイスの直列抵抗を0.132Ω/cm2まで低減することに成功し、短絡電流密度が18.2mA/cm2、電圧が0.544、FFが0.721で、発電効率7.14%を達成した。また、関連研究では透明絶縁性樹脂を用いたナノワイヤアレイの剥離手法ならびに剥離後の成長用基盤再利用を提案した。特に剥離したナノワイヤアレイ構造の裏面に金属電極を真空蒸着法で堆積することで、約2μmと薄く、空間占有率13%と隙間の多い構造ながら、約400nmから900nmの波長範囲で平均82.7%の光吸収率を実証した。これらの結果から、低コストかつ高効率化が求められる次世代型太陽電池として、ナノワイヤアレイ構造が持つ可能性と優位性を実証することができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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