研究課題
特別研究員奨励費
今年度は、Caenorhabditis elegansを用いた遺伝学的スクリーニングによって単離したPhotorhabdus luminescensの病原性変異株のうち、plu3602遺伝子の変異株に着目して解析を行なった。plu3602はγ-Proteobacteriaに属する20種類以上の細菌でホモログが見つかっているが、その機能は知られていない。ただ、Plu3602のホモログタンパク質であるHI0817の構造解析では、(1)2つのドメインを持つタンパク質であること、(2)これらドメイン間で二量体(ダイマー)を形成すること、(3)ダイマーの表面は負に帯電していること、(4)多くの細菌間で保存性の高いアミノ酸領域が存在すること、が明らかになっていた。そこでPlu3602におけるアミノ酸の保存性について調べたところ、2つのドメインがダイマーを形成するインターフェイスに位置するアミノ酸残基や、モノマー表面に位置するアミノ酸残基が保存されていた。したがって、これらのアミノ酸はPlu3602においても構造的・機能的に必要不可欠な領域であることが示唆された。また興味深いことにP. luminescensを含めた多くの細菌でplu3602ホモログとXaa-Pro aminopeptidaseをコードするpepP遺伝子が隣接していた。このことから、2つの遺伝子間に何らかの相互作用があり、保存された機能を有していることが示唆された。実際に病原性細菌Pseudomonas aeruginosaではplu3602のホモログ遺伝子またはpepPに変異が導入されると、C. elegansに対する病原性が低下するという報告もある。plu3602遺伝子の病原性への関与を解析するため、プラスミドによる相補株の作出を試みた。しかし、plu3602変異株は導入したプラスミドが安定して保持されず、また他の手法による相補株作成もうまくいかなかったため、plu3602遺伝子を破壊することで機能解析を行う必要性が示唆された。今後さらに詳細な解析を進めることで、Plu3602の分子機能と病原性に寄与するメカニズムを明らかにできると考えている。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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