研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、共役高分子薄膜の局所的な電荷輸送特性を、電流計測原子間力顕微鏡(電流計測AFM)を用いて解明することを目的とするものである。平成28年度は、太陽電池への応用が期待される電子ドナー材料(P3HT)とアクセプター材料(PF12TBT)との混合膜を研究対象とし、その局所的な電荷輸送特性、および、相分離構造と光電変換機能との関係を明らかにする事を試みた。具体的には製膜溶媒、加熱処理にともなう局所的な正孔輸送特性の変化を電流計測AFM測定により観測し、さらに太陽電池特性と比較検討を行った。得られた成果は以下の通りである。1. 加熱処理に伴う局所的な正孔輸送特性の変化:P3HTドメイン、混合相、PF12TBTドメインを有する、サブマイクロメートルスケールの相分離膜に対して、加熱処理前後で定点測定を行った。これにより加熱処理に伴う正孔輸送性の変化が二段階で引き起こされることを明らかにした。初期にはP3HTドメインとともに混合相全体で正孔輸送性が向上した。これは膜内のP3HTの平面化によるものと結論付けた。P3HTの平面化が飽和したのちは、混合相のPF12TBTドメイン付近で正孔輸送性の減少がみられた。これは相分離の進行によるものと結論付けた。太陽電池特性はP3HTの平面化が飽和し混合相の収縮が起こらない段階で最も高いことを明らかにした。2. 高効率な太陽電池特性をもたらす構造:製膜溶媒および加熱温度を最適化することにより、3.4%という高い変換効率を示す薄膜を作製した。電流計測AFM測定によりこの薄膜は膜全体が混合相であることを明らかにした。さらに、単一膜とブレンド膜の電流値のヒストグラムの比較から、膜内のP3HTは全てネットワークを形成し正孔輸送に寄与していることが示唆された。このような高い正孔輸送能を有する混合相の形成が高効率な太陽電池特性の起源であることを明らかにした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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