研究実績の概要 |
本年度は, 測度距離空間上のBrown運動の収束について研究した. Brown運動は, 測度距離空間のdataだけから決まる標準的な拡散過程である. そのため, 空間の幾何学的な情報とBrown運動の確率過程としての振る舞いは関係しているはずである. 本年度は, 収束という点に着目して研究を行った . 測度距離空間上には, measured Gromov-Hausdorff収束という幾何学的な収束概念がある. 一方で, Brown運動には, 確率過程の弱収束という確率的な収束概念がある. 本年度の研究によって, この異なる2つの収束概念が, RCD条件と呼ばれるRicci曲率を下から抑えられた空間のクラスを考えた場合は同値であるという事がわかった. この結果によって, 空間の幾何学的収束とBrown運動の確率的な収束の関係が明らかになった. RCD条件を満たす空間は, Ricci曲率が下から抑えられたRiemann多様体だけでなく, そのmeasured Gromov-Hausdorff極限空間のような特異点をもつ多様体ではない空間などが含まれている. また, 今回の結果は有限次元空間だけでなく, 無限次元空間を含む設定で結果が得られている. 例えば, Ric曲率が下から抑えられた Riemann多様体上の配置空間などが含まれる. Riemann多様体上の配置空間は, Riemann多様体上の可算無限個の Bronw運動の配置全体を表現した空間である.
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