研究実績の概要 |
初めに、束縛状態へのストリッピング反応の計算に歪曲波ボルン近似(DWBA)を採用し、DWBA計算コードDWUCK4を新たに組み入れることでこれまでに開発していた重陽子入射反応用計算コードシステムを拡張した。また、DWBA計算値の絶対値を決める分光学的因子(SF)についての系統的な調査も行った。その調査結果に基づき、現在のDWUCK4を使ったDWBA計算の枠組みではSFの値に標的核に依らず同様の入射エネルギー依存性が見られるということを明らかにした。その上で、実測データが存在しない入射エネルギー範囲においてもSFを求められるよう、SFの入射エネルギー依存性を記述する経験式を導出した。 次に、実測データが比較的多く存在する、(d,xp)反応の二重微分断面積(DDX)および(d,p)反応による放射化断面積について、開発したコードシステムの計算値と実測値の比較を行った。(d,xp)反応のDDXについては、炭素12, アルミニウム27, ニッケル58の3つの標的に対する実験データを解析した結果、計算値が特に前方角において実測値を良好に再現していることを示した。また、(d,p)反応による放射化断面積についても、アルミニウム27標的に対する解析の結果、幅広い入射エネルギー範囲において計算値が実測値を良好に再現することを示した。これらの解析から、本計算コードシステムで採用した計算手法が有効であることを示した。 応用上重要な(d,xn)反応のDDXは実測データがほぼ皆無であり、計算値と実測値の比較が難しい。そこで、開発したコードシステムで計算した(d,xn)反応のDDXから、厚い標的に対する二重微分中性子収量(TTNY)を求め、それを実測値と比較することで計算コードシステムの妥当性を評価した。炭素標的に対するTTNYの解析を行った結果、計算値が実測値を良く再現することを示した。この結果を持って、最終的な目標である(d,xn)反応のDDXの計算にも開発した計算コードシステムが有用である可能性を示した。
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