研究実績の概要 |
本研究課題では、細胞増殖を促進する転写コアクチベータANGUSTIFOLIA3 (AN3) が、シロイヌナズナ葉原基内にいかにして再現性良く発現分布を形成しているのか解明することが目的のひとつである。そこで、AN3と同等の分子量をもつGFPを用いてまずはFRAP解析 によるGFP拡散性の検討を行った。その結果、細胞増殖の活発な葉原基の基部ではタンパク質拡散性が低く、細胞増殖を停止し始めている先端部では高いことが明らかになってきた。本年度は、EMBO workshopや日本分子生物学会ワークショップでこの興味深い現象を積極的に発表した。 これまで、原形質連絡を介したタンパク質の移動については、分子レベルで盛んに研究が進められてきたが、この際の理論モデルはほとんど検討されていない。そこで、核膜孔複合体で提案されている理論モデルを応用して(Paine et al., 1975)、GFPが原形質連絡を通る際の動態を理論的に調べた。その結果、原形質連絡の孔がGFPに比べて10倍大きい場合であってもGFP拡散性は孔の大きさに影響を受けること、原形質連絡の孔が10 nmから40 nmへと変化した場合にGFP拡散性は2倍も高まることが分かった。これらの内容はJournal of Plant Research誌に発表した(Kawade and Tanimoto, 2015)。 さらに、AN3の細胞間移動と細胞増殖活性の関係について進化的な視点で考察するため、体制のシンプルなヒメツリガネゴケのAN3ホモログに着目した研究についても取り組み始めた。まず、ヒメツリガネゴケのゲノムデータベースで類似のタンパク質を探索し、4つのAN3ホモログを同定した。そして、これらの遺伝子下流にDendra2をノックインした形質転換系統を作出した。現在、各タンパク質の詳細な発現パターンを調べているところである。
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