研究課題
特別研究員奨励費
がん発生の初期において体内の正常上皮組織に最初の変異が生じたとき、新たに生じた変異細胞は周りの正常細胞との相互作用によって上皮細胞層から管腔側へ逸脱すること(apical extrusion)が明らかになった。しかし、お互いがどのような分子機構によって認識し合い、この現象が起こるのかはほとんど明らかになっていない。本研究では、変異細胞と正常上皮細胞間の相互作用にCav-1およびCaveolaeがどのように関与するのかについて研究を実施した。興味深いことに、正常細胞に囲まれた変異細胞内のCav-1 はapical およびlateral membrane domainに濃縮して局在することが観察された。また、Caveolaeを破壊する試薬を用いたところ、変異細胞の管腔側への逸脱は抑えられる一方、基底膜側への突起形成が増加することが明らかになった。この結果はCaveolaeが変異細胞の運命を制御することを示唆している。さらに、正常細胞に囲まれた変異細胞内で特異的にCav-1と結合する分子としてアクチン結合タンパク質EPLINを同定することに成功した。本研究では、(i) 正常細胞に囲まれた変異細胞内のEPLINが細胞間接着部位だけでなく細胞質にも局在および濃縮すること、(ii) EPLINがCav-1の局在を制御していること、(ii) EPLINがmyosin-IIおよびPKAの活性をpositiveに制御していること、(iV) EPLIN濃縮が正常細胞内のfilaminの変異細胞側への集積と互いに制御しあうこと、を世界で初めて明らかにした (Ohoka et al., 2015, Journal of Cell Science)。これらの研究をさらに発展させ、EPLINを介するシグナル伝達経路および隣接する正常細胞との相互作用をより詳細に解明することによって、正常細胞に囲まれた変異細胞を特異的にターゲットとする副作用のない新しいがん治療薬の開発に繋がるものと期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Cell Science
巻: 128 ページ: 781-789
10.1242/jcs.163113
http://www.igm.hokudai.ac.jp/public/20141210.html