研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、パスタを例に高品質な乾燥食品を製造する際の指針を提案することを目的としている。パスタ等の小麦粉食品中のグルテンタンパク質の構造は、製造および調理時の水分移動に関与しているだけでなく、喫食時の食感にも大きな影響を及ぼすため、高品質な製品を得るために特に重要である。したがって、食品中のグルテンタンパク質の立体構造を詳細に把握することは不可欠である。昨年度は、独自開発した新規の透明化試薬を用いることで、その立体構造を三次元的に計測することに初めて成功した。本年度は、この計測法を用いて、多様なグルテンタンパク質の構造を持つ麺を作製し、構造と破断挙動(食感)の関係について検討した。一例として、塩添加量を変えた麺を作製し、麺内部のグルテンタンパク質の3次元詳細構造を計測した。塩を添加しない麺では、非常に細いグルテンタンパク質のネットワーク構造が3次元的なハニカム状になっていたが、塩添加量が増えるにつれて、グルテンタンパク質のネットワークが太くなるとともに、凝集した。さらに塩添加量が増えると、凝集したグルテンタンパク質は解れ、再度、細く分散した立体構造となった。一方、喫食時の食感を定量化するために、クリープメータを用いて、楔形状のプランジャにより破断試験を行った。破断強度は、添加塩濃度に応じて低下した。これは、グルテンタンパク質の3次元的なネットワーク構造の変化とグルテンタンパク質自体の強度変化の双方が互いに影響を打ち消しあったためであると考えられる。このように、「透明化+蛍光」法による3次的な構造計測によって、食感に影響を及ぼす構造等の因子を詳細に解析できるようになった。なお、これらの成果の一部は、日本経済新聞および日本食品化学新聞に掲載された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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