研究課題
特別研究員奨励費
有機フッ素化合物は近年、医農薬や材料科学などの応用分野で大きな注目を集めているが、その合成法は十分には整備されていなかった。そこで申請者は、複数個のフッ素置換基を有する出発物質に対し、その炭素-フッ素結合の切断と官能基化を一挙に行うこと(炭素-フッ素結合の活性化)により、有用な有機フッ素化合物を合成する手法の開発を行った。ここで問題となるのは、炭素-フッ素結合が極めて高い結合エネルギーを持つ非常に安定な化学結合であり、その活性化が困難である点であった。この問題に対して申請者は、炭素-フッ素結合の活性化手法として、穏和な条件下でも効率的に進行するフッ素脱離に注目し、それを活用した有機フッ素化合物の合成反応を開発した。(1)ニッケル触媒によるフルオロアルケン類とアルキンの脱フッ素カップリング:フルオロアルケン類とニッケル錯体の化学的相性が良いことを利用し、ニッケル錯体上でアルキンとフルオロアルケン類を効率的に反応させる手法を開発した。本手法は、様々なフルオロアルケン類に適用することが可能であり、医農薬の分野で注目を集めるフルオロアレーンやモノフルオロアルケン、ジフルオロアルケンの迅速合成を可能にした。(2)ニッケル触媒によるジフルオロプロペン類とハロアレーンの脱フッ素カップリング:申請者は、ニッケル触媒を用いた3,3-ジフルオロプロペン誘導体に対する脱フッ素アリール化によるモノフルオロアルケン合成法を見出した。本反応は、極めて穏和な条件下で進行し、従来法では得難い高い官能基許容性を示した。(3)0価マンガンによるジフルオロジエノールシリルエーテル合成:β-トリフルオロメチルエノン類を0価マンガンとクロロシランで処理することで、ジフルオロジエノールシリルエーテルを高収率で合成できることを見出した。この化合物は、様々な求電子剤との反応が可能であるため、極めて有用な合成中間体である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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