研究実績の概要 |
Floor plateマーカーであるCorinと中脳マーカーであるLmx1aを組み合わせた細胞選別技術の開発によって、中脳型ドパミン神経前駆細胞に発現する細胞表面抗原マーカーとしてLrtm1 (Leucine-rich repeats and transmembrane domains 1)を同定した。LRTM1によって選別したヒトiPS細胞をパーキンソン病モデルラット脳内に移植すると、移植後3ヶ月目から薬剤を用いた旋回運動の評価で有意に症状改善を認めた。同時期の脳組織を免疫組織学的手法により検証したところ、生着細胞数はLRTM1陽性群で少ないのに対し(未選別群; 1,321,000細胞 vs. LRTM1陽性群; 163,000細胞 vs. LRTM1陰性群; 1,601,000細胞)、ヒト由来ドパミン神経細胞の数はLRTM1陽性群で有意に多いことが分かった(未選別群; 11,000細胞 vs. LRTM1陽性群; 44,000細胞 vs. LRTM1陰性群; 5,000細胞)。 さらに選別後のヒトiPS細胞が霊長類動物の脳内において成熟分化するのかを検証するために、選別後1日、7日、14日、21日目の細胞をカニクイザルの脳内に移植した。移植後3ヵ月の時点で腫瘍化を認めた個体は無く、選別後1日目の移植群を除くすべての群で細胞の生着が認められた。また生着したドパミン神経細胞の数は選別後14日の移植群に高い傾向が示唆された(7日間; 70,400細胞 vs. 14日間; 245,200細胞 vs. 21日間; 149,300細胞)。 今回の研究によりLRTM1を用いた細胞選別によってドパミン神経前駆細胞を濃縮できることが示された。そして選別後の細胞を脳内に移植すると、機能的ドパミン神経細胞に成熟分化することが明らかとされた。
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