研究実績の概要 |
本研究では、電位依存性ナトリウムチャネルを阻害する天然物サキシトキシン(STX)の中心骨格の効率的構築法の開発とそれを基盤としたパナマ産矢毒ガエル毒ゼテキトキシン(ZTX)の全合成を目的として研究を行った。ゼテキトキシンはサキシトキシンと共通の骨格を持ち、C6位からアミド結合を介しさらに高度に官能基化された置換基を持つことに加え、その構造は推定構造のままである。そこで、完全化学合成によるゼテキトキシンの構造の確認が必要である。 まず、前年度に確立したSTX骨格構築法を用いて合成したサキシトキシン天然類縁体であるdecarbamoyl-α-saxitoxinolの精製法を確立し、本手法を報文にて報告した(S. Ueno, A. Nakazaki, T. Nishikawa, Org. Lett. 2016, 18, 6368.)。次に、ゼテキトキシンの合成へと展開する目的で、新たなC6位の修飾法の確立を試みた。種々検討した結果、C6位のN,O-アセタールをアセテートへと変換した後、Hosomi-Sakurai反応によるアリル基やアルキル亜鉛試薬を用いたアルキル基の導入が可能であることを見出した。特に、これまでに導入したニトリルとアリル基はゼテキトキシンの持つアミドだけでなく様々な官能基へと変換可能であるため、これらの中間体を利用し天然・非天然型の多様なアナログ合成が期待できる。なお、これまでに報告されているSTX骨格構築法ではC6位にあらかじめヒドロキシメチル基が導入されているのに対し、本研究で開発した手法は、合成終盤でC6位の官能基化ができるため、C6位に異なる置換基を持つアナログ合成を効率的に行うことが期待できる。 今後は、C6位におけるアミド結合の形成によるゼテキトキシンに特徴的な大員環を合成しゼテキトキシンの全合成研究を進める計画である。
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