雲の気候変動の影響は大きいが、特に不均質な雲の寄与に関しては太陽との相対的な位置関係や地表面アルベドなどの周辺環境によって、地表面放射収支への寄与には大きな不確定性がある。本研究は様々な気候条件における観測地点のデータを用いて、地表面における長波放射と短波放射の放射収支と、それに対する不均質雲と地表面の効果を定量的かつ高精度で見積もることを目的としている。 (1). 衛星観測では観測することが難しい小スケールかつ地表面に近い変化を求めるために、亜熱帯、極域を含む12の観測地点における継続観測データを用い、雲・水蒸気・二酸化炭素・エアロゾル・地表面アルベドの下向き長波・短波放射に対する影響を評価した。この中で特に雲に関してはライダー、ラジオゾンデ、目視、全天カメラ、アクティブ・パッシブセンサーの衛星観測と複数の観測機器を用いてそれらの見積もりを比較した上でその影響を評価した。本結果は博士論文に纏められている。 (2). 太陽直達光を防ぐ遮蔽装置や直達光による加熱・付着物の除去を抑制する換気装置が備え付けられておらず、波による傾きや飛沫の影響を受ける海上ブイ設置の放射計の精度を評価するため、太平洋西側日本沿岸域のブイ設置放射計と日本太平洋側の陸地にある放射計の観測値を、衛星・再解析プロダクトと比較したうえで、誤差要因となる要素の変化に対する誤差の変化を評価し、その変化要因に関して考察を行った。本結果を纏めた論文は投稿され、受理されている。 (3). 雪氷面による強いアルベドや雲の観測の難しさによって放射収支への理解が十分ではない極域において、長波・短波放射と雲や地表面の影響およびその長期変動を評価した。本結果は国内・国際学会で発表されている。
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