研究実績の概要 |
本研究では、以下の実験を行い、肝発がん物質ないし腎発がん物質投与によって生じる細胞周期関連分子の発現変動を経時的に検討した。 (1)ラットの腎発がん物質投与早期から生じる細胞周期制御異常とその出現時期の検討 ラットに腎発がん物質(nitrofurantoin、1-amino-2,4-dibromoantraquinone、1,2,3-trichloropropane)ないし非発がん性腎毒性物質(1-chloro-2-propanol、triamterene、carboxin)を 3、7ないし28日間反復投与した。その結果、腎発がん物質は投与開始後28日目で、UBD陽性細胞のうちp-Histone H3を共発現する細胞の割合およびM期における増殖細胞の割合を減少させたことから、M期チェックポイント機能の破綻を誘発していることが推察された。 (2)ポストイニシエーション期における肝発がん物質/プロモーターの細胞周期制御異常への関与の検討 ラット肝発がんイニシエーション・プロモーションモデルを用いて、肝発がんプロモーター物質のβ-naphthoflavone(BNF)、肝発がん物質のcarbadox(CRB)、弱い肝発がん物質のleucomalachite green(LMG)ないし非発がん性肝毒性物質のacetaminophenを2、4週間投与した。その結果、投与開始後4週目で、BNFおよびLMGは増殖活性を亢進し、CRBおよびBNFはM期チェックポイント機能の破綻を示唆する結果を示した。これらの結果から、発がんイニシエーション・プロモーションモデルでは、肝発がん物質および肝発がんプロモーター物質は、反復投与によっては反応性を示さない物質についても、ポストイニシエーション期での投与により、細胞増殖の亢進ないしM期チェックポイント機能の破綻を誘発することが推察された。
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