研究実績の概要 |
平成27年度は、8-アザ-3,7-ジデアザアデニン骨格を有する新規核酸分子を多段階反応により合成することに成功した。このヌクレオシド誘導体は3位(DNA二重鎖マイナーグルーブ側)および7位(DNA二重鎖メジャーグルーブ側)の2か所の位置での修飾(置換基導入)が可能である。そこで、まず、8-アザ-3,7-ジデアザ-2'-デオキシアデノシン誘導体の応用例として、3位にナフチルエチニル基を導入した蛍光ヌクレオシドを合成し、これらを含む蛍光DNAプローブの開発にも成功した。この誘導体は周辺の極性環境や立体構造等の微細環境の違いにより蛍光発光波長が大きく変化する(蛍光色の変化が見られる)化合物であり、蛍光DNAプローブ中で、アデニン(A)と同様な水素結合パターンを示すことを実験により確認した。さらに、新しく開発した蛍光DNAプローブは、相手塩基がチミン(T)の場合のみ蛍光発光波長を変化させることから、蛍光発光色の違いでチミン塩基の有無を識別できることを明らかにした。そこで、MTHFR遺伝子配列を識別するプローブへの応用を試みた。3位にナフチルエチニル基を導入した8-アザ-3,7-ジデアザ-2'-デオキシアデノシンを含むMTHFR遺伝子の相補鎖となる蛍光DNAプローブを作製し、正常遺伝子配列(C型)、変異遺伝子配列(T型)それぞれとハイブリダイズして、蛍光スペクトルの測定を行ったところ、MTHFR遺伝子の変異遺伝子であるT型を蛍光強度および発光波長の劇的な変化で識別することに成功した。このように、平成27年度で開発した新しい環境感応型蛍光核酸分子は、遺伝子検出試薬、遺伝子検出用蛍光DNAプローブとしての用途が期待できる。
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