研究課題
特別研究員奨励費
粒子の空気輸送メカニズムを解明するため,これまでに平均風速場の計算と個々の粒子計算を組み合わせた理論モデルを構築した.本年度は,既存成果の主要因特定のため詳細な物理量の解析①と②に加え,理論モデルの3次元乱流場への拡張③について,以下の通り実施した.①1964年に提唱されたOwenの仮説を検証するため,粒子が飛散し始める臨界近傍における流体・粒子剪断応力の風速依存性について調べた.粒子輸送下で発生する粒子応力は,下降・上昇粒子の総運動量の差から算出される.その結果,流体と粒子応力の和は全ての風速条件で空間一様であったため,風速に対する粒子応力の変化が地表面応力特性の要因と特定された.さらに,粒子応力の風速依存性は,跳躍粒子の粒度分布変化によって説明されることを明らかにした.②跳躍粒子と地表面の衝突であるスプラッシュ過程を,既存の単一スプラッシュ実験に基づき再構築し,飛散粒径に応じた輸送形態の変化について調べた.その結果,粒子の運動形態は,粒径100 μmを境に跳躍から浮遊へ遷移し,既存の観測や実験結果と対応することを示した.さらに,スプラッシュ過程の再構築に伴う粒子運動の改善は,衝突速度に非依存した鉛直方向の反発係数によって生じたことを明らかにした.③風速場の空間不均一性による輸送の非定常ダイナミクスを理解するため,Large-Eddy Simulationによる乱流計算手法とスプラッシュ関数を用いた粒子計算手法を連成させた新たな粒子の乱流輸送モデルを開発した.そして,一定速度の壁面駆動による風速場の下,粒径100 μmの場合に生じる粒子の乱流輸送構造を調べた.その結果,主風向に沿った筋状の空間構造が,局所的に取り込まれた粒子によって形成された.さらに,この構造は時間的に輸送の発生と停止を繰り返す間欠性を示すことを明らかにした.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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