研究実績の概要 |
本年度は、前年度で得た結果を踏まえて、タンタラシクロペンタジエン錯体を、ジエン部位を有する含金属配位子として扱うことにより、タンタラシクロペンタジエン骨格を有する異種金属2核錯体の合成を行い、触媒機能に関して研究を行った。 アルキンが配位したタンタル単核錯体に対して、塩化アルミニウム存在化において 3,3-ジメチル-1-プロピンを反応させることにより、単核のタンタラシクロペンタジエン錯体 1 を合成した (Scheme 1)。次に、錯体 1 に対して、[RhCl(cod)]2, [IrCl(cod)]2 をそれぞれ反応させると、ジエン部位がロジウムやイリジウムに配位することにより、異種金属2核錯体 2 ならびに 3 を高収率で合成することに成功した。これらの錯体の配位子置換反応を行うことにより、様々な錯体を合成することに成功した。例えば、タンタル-ロジウム錯体 2 に対して、当研究室で開発した有機ケイ素還元剤を作用させることにより錯体 2 の2電子還元反応が進行し低原子価錯体 4 が得られた。また錯体 4 の塩素配位子はソルトメタセシス反応により配位子置換することによって様々な錯体へと誘導することに成功した。以上に記した新規錯体の分子構造は X 線結晶構造解析ならびに各種NMR測定により同定した。 合成した錯体の触媒機能を調査した結果、タンタル-ロジウム錯体が芳香属化合物の水素化反応に対して触媒活性を示すことが明らかとなった。さらに、カルボニル基やアミド基といった官能基が存在する条件下においても選択的に芳香環が水素化されることが明らかとなった。これらの結果から、芳香環選択的な水素化反応の開発に向けて、現在基質一般性の拡大を行っている段階である。
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