研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、運動に対するストレス・炎症応答の遺伝的差異が、運動の健康増進効果の個人差を規定するという仮説のもと、運動に対するストレス・炎症応答の個人差を規定する遺伝要因を探索することを目的として行った。33名の高齢者(年齡:69.6 ± 4.2歳)を対象とした介入実験により、持久性トレーニングが、血中の炎症指標の一つであるfibroblast growth factor 21(FGF21)濃度に及ぼす影響を検討した。実験デザインにはランダム化クロスオーバー比較試験を用い、最大酸素摂取量の60~75%の強度で、1回30~45分、週3回の自転車運動を5週間負荷した。介入前後で血清FGF21濃度を測定し、トレーニング期間とコントロール期間における血清FGF21濃度の変化量を比較した。その結果、5週間の持久性トレーニングにより血清FGF21濃度は減少し、コントロール期間と比較してトレーニング期間における血清FGF21濃度の変化量は有意に低い値を示した。さらに、持久性トレーニングにより肝内脂肪量は減少し、その変化量は血清FGF21濃度の変化量と正に相関することが明らかとなった。したがって、持久性トレーニングによる肝内脂肪量の減少に伴い血清FGF21濃度は低下することが示唆された。血清FGF21濃度が高い者において、心血管疾患や2型糖尿病などのリスクが高まることが明らかとされているため、運動により肝内脂肪量および血清FGF21濃度が減少しにくい者は、運動の健康増進効果を得にくい可能性がある。しかし、持久性トレーニングによる血清FGF21濃度の減少量を規定する遺伝子多型の同定には至らなかったため、今後更なる検討が必要である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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