研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、貴金属アニオン錯体の選択的認識に関する分子設計概念および抽出機構の分光学的解析手法を確立することを目的としている。本年度は、白金(Ⅳ)の詳細な抽出機構の解明をおこなうため、1H-NMRおよび195Pt-NMRスペクトルを用いた、有機相中における抽出試薬の会合状態および白金(Ⅳ)の抽出前後の状態の変化を観察した。また、カールフィッシャー水分計による抽出前後の有機相中の水分量の変化から白金(Ⅳ)の抽出への水分子の関与を検討した。シンプルな構造を有するアミドおよびウレア型抽出試薬による白金(Ⅳ)の抽出において、アミドおよびウレア基のNH部位による白金(Ⅳ)ヘキサクロロアニオンへの水素結合の形成による抽出能力の向上が観察された。次に有機相中における抽出試薬の会合状態を観察するために、IRおよび1H-NMRスペクトルによる解析をおこなった。この結果から、抽出試薬濃度の増加に伴い抽出試薬同士が分子間水素結合による会合をしていることが明らかとなった。抽出試薬が形成する会合体の内部への水分子、塩化物イオン、および白金(Ⅳ)ヘキサクロロアニオンの取り込みが示唆された。次に抽出前後の白金(Ⅳ)の状態を観察するために、抽出前後のUV-Visおよび195Pt-NMRスペクトルの解析をおこなった。この結果から、白金(Ⅳ)ヘキサクロロアニオンとして抽出された白金(Ⅳ)は抽出試薬との静電的相互作用や水素結合の形成により、抽出前と比較して電子密度が低い状態となっていることが明らかとなった。さらに、白金(Ⅳ)の抽出への水分子の関与を検討するために、カールフィッシャー水分計による抽出前後の有機相の水分量の測定をおこなった。この結果から、有機相中への1つの白金(Ⅳ)ヘキサクロロアニオンの抽出に伴って、2つの水分子が水相中へ放出されていることが明らかとなった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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ぶんせき
巻: 492 ページ: 534-544