研究課題
特別研究員奨励費
近年の再生医療分野の進歩によりES/iPS細胞から様々な体細胞への分化が報告されている。我々は多能性維持に関与する報告のある転写因子p53、また多様なメカニズムが明らかになりつつある、長鎖noncording RNA(lnc RNA)に着目し、ヒトES/iPS細胞の分化時の役割についての解析を行った。これらの材料としてCRISPR/Cas9システムを用いてp53ノックアウトES/iPS細胞を用いた。分化モデルとしてSMADシグナル阻害による神経外胚葉への分化モデルを用いて検討を行った。分化に伴い、神経幹細胞マーカーPAX6の発現上昇を認めたが、p53ノックアウトES/iPS細胞ではPAX6のより強い誘導を認め、不完全なSMADシグナル阻害条件でもPAX6は強い誘導を認めた。メカニズム解析としてepigenetic修飾を評価したところ、p53ノックアウト細胞ではPAX6プロモーター領域でのH3K4me3のより強い上昇を認め、RNA-seq及びsi-RNAによるノックダウンでの解析ではメチル化酵素MLL1の関連が考えられた。また、SCIDマウスへのテラトーマ形成実験において、p53ノックアウトES細胞で未分化な脳組織が多い傾向も確認された。さらに次世代型シークエンサーを用いたRNA-seqとmate pair法を組み合わせ、ES/iPS細胞特異的に発現するlnc RNAを複数同定した。sh-RNAを用いてES細胞でのノックダウン効果を確認したところ、コロニー形態変化と多能性維持遺伝子の発現低下を認め、RNA-seqを用いた解析ではNESTINを始めとした神経系マーカーの上昇を認めた。これらの結果よりp53と一部のlnc RNAは幹細胞制御を行うだけでなく神経系の分化制御に関与することが示された。これらの因子の制御により誘導効果・質の高い再生医療への応用が期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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日本内分泌学会雑誌
巻: 91 suppl ページ: 30-35
J Clin Endocrinol Metab.
巻: 101(3) 号: 3 ページ: 841-846
10.1210/jc.2015-2855